もう一つの公平な配分方法

今までは、均等配分、比例配分、シャプレー値による配分という配分方法を見た。

これらは、それぞれ違った公平性・平等性の視点を持った配分方法だ。ここでは、もう一つ、公平性・平等性の視点を持つ、簡単な配分方法を紹介したい。

今、AとBの2人が国に対して保障を求めているとしよう。

Aは50万円、Bは100万円、あわせて150万円の保障を2人で請求した。国はAとBの請求の一部をのむ形で、A、Bに合計120万円の保障を支払った。

AとBは2人の貢献度を測りたかったので「もしA単独で請求したら、そして、もしB単独で請求したら、それぞれいくら保障がもらえたんですか?」と国に質問したが、「答える義務がない!」ということで、答えが得られなかった。

1人で請求した時の結果がわからないので、シャプレー値を求めることはできないし、抜け駆けした方が良かったのかもわからないのでコアもわからない。現実では、このような状況は多いだろう。

このようなときには、次のような3つの配分案は公平性・平等性の視点に基づき説得力が高い。

①A:60万円 B:60万円

②A:40万円 B:80万円

③A:35万円 B:85万円

それぞれどのように考えて配分したのだろうか考えてみよう。

①は均等配分だ。2人で120万円を得て、その貢献度は同じと考えているとこのような配分になる。「1人で請求したら通らなかったよね」という価値観だ。

②は比例配分だ。2人で120万円を得たが、その貢献度は「もともとの請求額に比例するのだろう」という考えだ。Aの取り分=120万円×50÷(50+100)=40万円で、残りがBの取り分だ。ここまでは本章でも何度か見たとおりだ。

③は今回のメインで、これは「どこまで妥協できるか?」という考え方に基づく配分方法だ。少し具体的に見てみよう。

120万円のうち、Aが初めに請求したのは50万円だった。もし120万円から、当初の請求である50万円をAが受け取れば、Bは残った70万円を得ることになる。逆に言えば、「Aは、70万円はBにあげても全然構わない。」わけだ。

一方、120万円のうち、Bが初めに請求したのは100万円だった。もし、120万円から、当初の請求である100万円をBが受け取れば、Aは残った20万円を得ることになる。逆に言えば、「Bは、20万円はAにあげても全然構わない。」わけだ。

「AはBに70万円あげてもいい」、「BはAに20万あげてもいい」と思っている。それなら、120万円のうち、まず、Bに70万円、Aに20万円を分けてしまおう。そして残った30万円を分ける、ここでは均等に15万円ずつ配分しようじゃないか。すると、Aが35万円、Bが85万円になるわけだ。

このような配分方法も、公平感や平等感を得やすい配分方法の一つなので、考え方を知っておいて損はないだろう。