統計編 性の乱れのウソを見破れ!

「高校生の性の乱れ」というたぐいの報道はいつの時代もされているが、ある報道では、時代が変わるにつれて、女性も男性も性交渉の相手がどんどん増えている、という内容の報道があった。ここでは、次のような報道を考えてみよう。

日本人の生涯の性交渉の相手の数は、戦前では男性が平均して8人、女性が平均して3人であった。

ところが戦後になると、男性が9人、女性が7人に増加したという調査結果が出た。女性の性交渉の相手の増加が顕著であり、戦後の日本の成長により、戦前のつつましい性生活が乱れていってしまっている。

さて、この調査は本当だろうか?

これも、答えはNO。

少し、わかりにくいかもしれないが、単純な例を用いて考えてみると分かりやすい。男性と女性が5人ずつで以下の2パターンのように性交渉を持ったとしよう。

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ケース1はそれぞれひとりずつと性交渉の経験がある場合。ケース2では性交渉の相手が多い人もいれば、全く経験がない人もいる。しかし、ケース1、ケース2のいずれの場合でも、男女の数が同じなら、必ずその平均は同じになる。

というのも、性交渉は相手がいなければすることができないもので、一回行われれば男の方にも女の方にも1回カウントされるものだからだ。男女の人数が同じであれば、当然同じ平均になる。

もちろん、現実は男女の数は完全に同じではないなど多少のズレはあるだろう。しかし、みんなが正直に回答して調査対象に偏りがなければ、平均は大体同じ水準になるはずなのだ。この報道の「戦前の男性8人に対する女性3人」という数字には、かなりのウソや見栄が入っていると簡単に予想できる。

アンケートの内容によっては、正直な回答が得られにくく、データにそもそも信頼性がない場合がある

このような明らかに信頼性のないデータを見せられたら「性が乱れてけしからん!」と騙されるのではなく、「昔の人は見栄っぱりだなぁ。」と少し微笑むくらいに留めておこう。

似たようなものでは、例えば、部下が上司を評価するような場合や、就職活動中の学生に対する企業が行うアンケートなどで、名前を記載する場合などだ。回答者がいくら心の中で「最悪だ」と思っていても、正直には回答しにくく、良い結果ばかりが調査結果として集ってしまう。その結果、何も改善されないというアホなことは現実でもよく起きている。