株式投資の本質~ゼロサムゲーム

現実に眼を向けてみると、株式関連の書籍売り場に行けば、「素人でも何億円儲った投資術」、「誰でも勝てる投資法」、といったたぐいの書籍が多くあることが確認できる。

しかし、もしこれらが真実なら、株式投資で誰でも億万長者になっているだろう。自分も含めてまわりはみんな億万長者だらけ、少なくとも知り合いに、新たに億万長者になった人がいないとおかしいはずだ。

では、実際に株で億万長者になった人が果たしてどれだけいるのだろうか?私の知り合いでは0人だ。現実的にそれほど多くはないだろう。

この事実から、「これら書籍なんて価値が全くないものだ!」と言いたいわけではない。それよりも、「そもそもの本質を捉えていないのでは?」、ということが重要だ。つまり、「誰もが必ず勝てる」ということが本当にありえるのかどうか?を考えてみると、話がわかりやすい。

株の売買には、売り手と買い手が必ずいる。株価が上がって買い手が得をするのであれば、売り手は得する機会を逃している、これが基本的な本質だ。株式市場の本質はゼロサムに近いのだ。

ゼロサムとは、日本語で言えば、「足したらゼロ」という意味で、簡単に言えば、誰かが得をすれば、その分、誰かが損をする状態のことをいう。

例えば、成熟した市場でのシェアの取り合いは、シェアを獲得した会社がある反面、シェアを奪われた会社が必ずある。このような状態はゼロサムだ。また、先物取引やオプション取引、FX取引もゼロサムだ。そして、持続的に株価が上がらない場合、株式市場の本質もまたゼロサムなのだ。

このような例を見ると、なかなか複雑そうにも聞こえるが、簡単に言えば、勝者がいる一方には、必ず敗者がいるという状況だ。サッカーのPKも、ゴールを決めて喜ぶチームがある一方、ゴールを決められて悲しむチームがありゼロサムの一種である。

このゼロサムの状態では、「みんながみんな、すべての人が勝つことができる」なんてことは、絶対に不可能だ。つまり、「みんなが勝てる!」なんてことは、そもそもありえない。すべての株価が、永遠に上がり続けるような状態であれば、みんな勝つことができるが、そこには投資術も投資法も必要ないだろう。