カルテルやトラストが生まれた理由

先ほどの値下げ合戦となってしまう囚人のジレンマに直面したら、初めの段階では気がつかなくても、そのうち「このまま値下げ合戦を続けるのはヤバイんじゃ…」とだんだんと気がついていく。

そして、それを認識した当事者は、なんとかそこから脱出して良い結果に行く方法はないだろうか?と解決策を探すものだ。

先ほどの牛丼の話では、値下げ合戦が一度始まってしまうと、このまま合理的に動き続けると究極的に行き着くところまで行ってしまうという話だった。

牛丼に限らず多くの業界でこのようなことは見られる。たとえば、携帯電話、発泡酒、家電商品などを見るといい。似たようなものはどれも似たような価格で、しかも、当初よりだんだんと安くなってはいないだろうか。

では、そもそもの値下げ合戦が始まってしまう原因を考えてみよう。ひとつの原因は相手との連絡が取れないという状況だ。つまり、相手の行動に自分が全く関与できない。相手の行動が分からないので「相手が値下げしてくるかもしれない」という懸念から値下げをしてしまうこともある。

そして、一方が値下げをしてしまったら、もう一方も値下げで対抗するしかない。先ほどの吉野家と松屋の例で、仮に、吉野家が先に値下げした状況を考えてみよう。

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松屋は次のような状態で、赤丸の内どちらかを選ぶしかなくなってしまっている。値下げをしないで客を奪われるより値下げをして対抗した方が得なのだ。

このように、相手と別々に合理的に行動して、結果的にお互いが悪い結果になるとわかるのなら、初めから手を組んで二社で協力して価格を据え置いてしまったらいいのではないか?と思うだろう。

そういった解決策がカルテルトラストだ。