統計編 難関資格も合格率98%!通信教育の謎

合格率5%という、難関の国家資格の通信教材がある。この教材は次のような2つのうたい文句をしていた。

①合格保証

この通信教材の内容には、絶対の自信があります。そのため、通信教材での学習を完了した方には、合格保証をつけています。そのため、教材すべてを終えたにも関わらず、不合格になったとしたら、通信教材の費用を全額返還する、という仕組みです。もし、不合格者ばかりなら、当社には全く収入がなくなります。それだけ自信があるということです。

②合格率98%

この通信教材を完了した人の合格率は98%となっています。くわしくは直近5年間の返金率の実績をご覧ください。これは、通信教材での学習を完了して合格保証を受けたにもかかわらず、不合格になってしまった人の割合です。

20xx年20xx年20xx年20xx年20xx年平均
返金率3%1%2%2.5%1.5%2%

これから分かるとおり、通信通信教材を終えて、返金を受けたという人は平均して2%しかいないわけです。つまり、この通信教材で学習を完了した人の合格率は98%なのです。この合格率は、過去のデータに基づいているので間違いありません。

さて、この2つのうたい文句を見て、「なんてすごい教材だ!」「こんな効果が高いなんて。国家資格も欲しいし、是非やろう!」なんて思うかもしれない。しかしそう思った人は騙されている。

実はこのデータだけでは、この通信教材を完了した人の合格率は不明で、効果があるかわからないのだ。むしろ、詐欺の可能性が高いともいえる。

例えば、この通信教材は、誰もが到底完了できないほどの量がある場合が考えられる。仮に10,000人がこの通信教材を受講し、そのうち200人が通信教材を完了し合格保証までこぎつけ、そして、200人全員が不合格となり返金を受けたとしよう。

すると、通信教材を完了した人の合格率は当然0%だが、しかし、返金率は10,000人中200人なので2%となっている。合格率98%といううたい文句とはえらい違いだ。

数字自体は正しくても、その使い方や説明が正しいとは限らない

要は、それっぽくうたっているが、実際には返金率と合格率は全く関係性がないのだ。

では、不合格者ばかりのこの状態で、うたい文句どおりに会社は損をしているのだろうか?もちろんNOで、200人分は返金したため利益はないが、9,800人の挫折者には返金しなくてもよいため9,800人分の利益が得られる。これでは合格保証の意味はないだろう。

そもそも、難関な国家試験に、通信教材を終えるだけで、今までずっと勉強してきた受験生達を相手にとんでもない高い確率で勝てるというおいしい話があるわけない。

もちろん、通信教材の中身が非常にすぐれている可能性もあるが、数字の見せ方がおかしなものは、ダメな方に疑うほうが正解である。