問題を細分化し、相手の裏をかくジョーク3
この学生はどのように解決策を考えたのだろう?もちろん、ピンと来てのとっさの行動だが、その考え方には、ゲーム理論のコツが隠されている。
彼はまず、自分の状況を見つめなおしてみた。「教授を説得し、自分の答案を受取らせ、採点させる」ことにチャレンジしているが、本当にこれは必要なのだろうか?
ここで、冷静に考えてみた。試験に受かるためには、どうしなければならないのか…そうすると、随分と余計なことがあることに気が付いた。
必要なのは「自分の答案を採点させる」これだけで十分なのだ。教授を説得したり、答案を受取らせたりするということは、採点させるためのひとつの方法に過ぎない。
そして、物事を細かく分けて考えることで、教授を説得して答案を受取らせることが無理でも、採点させるための別の方法を考えればよいということに気がついた。つまり、物事を細かく分けて見ることで、新しい道のりの可能性を見い出したのだ。
そして、次に教授の目的を考えてみた。教授は自分を留年させたい。そのためには自分の答案を採点しなければよい。このまま教授が答案を受け取らなければ採点はされないのでもちろん留年だ。答案を受け取っても、自分の答案だとわかってしまえば採点しないだろう。やはり留年だ。しかし、自分の答案だとわからないように、強引に紛れ込ませればどうだろう!?幸運なことに名前を知らないではないか!!
教授も、この学生を確実に留年させたかったのであれば、初めに受取ることを拒否するのではなく、それらしく受取ってしまえばよかったのだ。そうすれば受取った答案が、この学生の答案だと確実に分かる。学生が退室した後に、ゴミ箱に捨てるなり、0点をつけるなりしてしまえば簡単だったのだが、「このまま説得に応じず、受取らなければいい」と軽く考えていた結果、隙を突かれてしまったわけだ。
もちろん教授の立場からすれば、そんなことまで予想するのは難しいと思うかもしれない。しかし、ちょっとした隙を突かれることや、思わぬ不意打ち、という日常でも起こっていることの多くは、自分勝手に相手行動を「こうはしないだろうな。これはないな。」と決め付けてしまうことから起きてしまう。しかし、物事を細かく考えることを身につけておけば、相手の選択肢を広く考えることができ、より防ぎやすくなるわけだ。
そして物事を細かく見れば、自分の選択肢を広げることもできる。選択肢を広げることで、このジョークのような逆転の可能性を見つけることもできるわけだ。また、自分から選択肢を狭めるようなことをしているようでは、ビジネスや勝負事で相手がいかに油断していようとも、有利に進めることは難しいだろう。
ゲーム理論では、理論の本質から、相手の立場を考え、さらに物事を細かく見ることを前提としている。それに触れるだけでも、そういった視点が自然と身についていくことは間違いない。