利益でなく損失に注目するにはワケがある

株式投資の話に戻ろう。

株式投資では、利益ばかりに注目してしまいがちだが、ゼロサムの本質を考えればそれは望ましくなく、ミニマックス戦略の考え方を実践し、損失を少なくするように心がけた方が望ましいのである。

では、何故損失を小さくした方が良いのかを次の2つのケースから考えてみよう。

ケース①

株価が1,000円だったところ、株価が30%下がってしまった。しかしその後もちなおし、下がった状態から30%値上がりした。さて、この株を1,000円で持っていた場合、今の収支はどうなっているだろう?

ケース②

株価が1,000円だったところ、株価が30%上がった。しかしその後、弱くなり、上がった状態から30%値上がりしてしまった。さて、この株を1,000円で持っていた場合、今の収支はどうなっているだろう?

ケース①は値下がりして損失が出た状態で回復する動きを見せた場合、ケース②は上がって利が乗っている状態で利益が減ってしまう動きを見せたという場合である。両方のケースについて、それぞれ直感で答えを予想してみよう。

トントン

プラス

マイナス

答えは両方のケースともマイナスだ。

ケース①

まずは30%値下がりしたので1,000×0.7=700円

その後30%値上がりしたので700×1.3=910円   

1000円が910円になっているので9%のマイナスだ。

ケース②

まずは30%値上がりしたので、1,000×1.3=1300円

その後30%値下がりしたので、1,300×0.7=910円

同じく9%のマイナスだ。

これはひとつの現実を表している。

・利益は減りやすく、損失は回復しにくい。

30%の値下がりを回復するには1000÷700=1.429倍、つまり約43%の値上がりが必要なのだ。逆に、30%の値上がりを打ち消すには1,000÷1,300≒0.77倍、つまり約23%の値下がりでいいのだ。23%と30%と43%では、起きる可能性が違うことは理解できるだろう。

利益を得たとしても、その利益は、いとも簡単に吹き飛んでしまう。そして一度大きな損失を抱えてしまったら、いかに回復するのが難しいか、という現実だ。だからこそ、長く生き残り、利益を出し続けるためには、損失に注目することは非常に重要なのだ。このような状況では、ミニマックス戦略の「損失を最小限にする」という考え方が非常に有効だと覚えておこう。