統計編 「主婦のへそくりは平均230万円」は本当??2

勘の鋭い人は「あれ?」と思ったかもしれない。実は、「主婦のへそくりの平均額は約230万円」という見出しの数字は、目に付くように都合よく作ったものなのだ。この例では、4つのポイントがある。

1つ目のポイントは、この平均230万円という数字が「へそくりをしている人のみ」の平均ということだ。へそくりをしていない人はカウントされていないが、これでは主婦「全体」は反映できていない。

へそくりをしてない人も含めた全体の平均は約100万円なので、230万円とはえらい違いだ。そして、実際はへそくりしていない人が56.4%と多数派であり、世間一般で言えば、へそくりをしていない方が普通なのだ。


2つ目のポイントは500人という調査数だ、これは、統計学的にはかなり少なく、信頼性は低い。このポイントは、「700万円以上というツワモノも2.8%に上る。」という一文に表れている。

例えば、この500人の中に資産家の妻が1人いて、5億円のへそくりがあると、他の499人が0円でも、平均は5億円÷500人=100万円となる。この調査では700万円以上が2.8%の14人いるが、この中に1億円以上持っている人がいるかもしれない。調査数が低いと、特殊な回答の影響を非常に受けやすく、データの信頼性は低くなってしまうのだ。


3点目のポイントは、へそくりという定義が曖昧なことだ。調査では「夫に内緒の資産(へそくり)は…」となっており、「夫に内緒の資産」を聞いているようだ。

しかし、世間一般でへそくりといわれたら、へそくりの語源のように「妻の、自分のための隠し資産」という印象を受けないだろうか?回答で「夫に内緒の資産」と言われたら、夫が知らないだけの「いざというときのための貯蓄や、子供の教育費」とった資産も含めて回答する人も多いだろう。この場合、語源通りのへそくりとくらべて、当然ながら平均は高くなるわけだ。


4つ目のポイントは見栄だ。回答者が正直に答えているとは限らない。特に、「アンケートを回答してくれた人にはプレゼントを実施」といった具合に名前を書く場合は、見栄が反映され、数字は増えやすい。このような可能性も考えなければならない。


このように、現実でも複数のダマシが混在していることもある。ただし、いくらダマシであっても、色々な人を調査し、データを集め、それを元に数字を出したということは事実である。だからこそ、あまり意味がないものでも騙されやすい。それを、信頼性が高そうな大手企業やメディアが行えば尚更だ。

もちろん、騙されてもたいした影響がないものであれば、さして気にかける必要もないだろう。しかし、世の中には、数字をうまく使った詐欺的な営業や商品も多いので、うまい見出しにすぐに反応するのではなく、判断する側が気をつける習慣は大事である。

出された数字が一部分のみしか反映していないかもしれない

調査数が少ないと、特殊な人の影響が全体に反映されてしまい実態を表していないかもしれない

実際に聞きたい内容と、回答者が答えている内容が同じとは限らない

回答方法によっては、見栄などがはたらき、正直に解答しているとは限らない