「青田買い」と「ねるとん」にみる結果を有利に変える方法

ゲール=シャプレーアルゴリズムによって、みんなにとって良い結果であるコアを求める方法はこれまで見た見た通りだが、一方で、「この結果ではおもしろくない!」という場合も多いだろう。

このような場合に、どうすれば自分にとって有利にできる可能性があるのかを「青田買い」と「ねるとん」から少し学んでみよう。

青田買いとは、就職活動中の学生に、企業がかなり早い時期から採用内定を出す戦略のことだ。入社して欲しい学生に早く内定を出して「今すぐ答えを出してくれ、そうでなければ内定は取り消しだ」とせまるのだ。

学生は、他に受けたい企業があっても「今行くといえば、就職先が確実に決まる。断れば行きたい企業を受けることができるが「もしそこに落ちたらどうしよう…」と考えるだろう。「青田買い」の狙いは、学生が他の企業と接触することを防ぐことであり「他の企業に行かれてしまうかもしれない」と恐れている企業の戦略である。


次は、ねるとんを見てみよう。少し昔の番組だが、とんねるずが司会の「ねるとん紅鯨団」という番組をご存知だろうか。「とんねるずのみなさんのおかげでした」の年末スペシャルで芸能人大会も放送されていた。似たようなバラエティ番組はその後も多く放送されている。

概要を簡単に説明すると、男性と女性を数人ずつ集め、自己紹介、フリータイムで各自談笑、その後告白タイムという流れだ。そして告白では、男性が順番に告白していく。告白する男性は、意中の女性の前に立つ。他に誰もいなければ、そのまま告白し、他にその女性に告白したい男性がいれば、「ちょっと待った!」と叫んで、その女性の前に男性が並んでいく。男性が告白し、女性が気に入ったらカップル成立して2人で消え、気に入らなければ「ゴメンナサイ」といって拒否する仕組みだ。

ねるとんでは、女性は目に来た人の中から選ぶかどうかを迫られる。つまり、「他にいる好きな男性が、別の女性に振られて後から自分のところに来るかもしれない」が「ここで決めないと、もし来なかった場合にあぶれてしまう」という状況になり、最も好きな男性以外でもOKを出してしまいやすい状況になっているわけだ。


この青田買いとねるとんの共通点はなんだろう。これは「早期決着」「即決」だ。

ゲール=シャプレーアルゴリズムの良い結果を導くには、先ほど見たようにキープしながら何度かステップをこなす必要があった。青田買いをする企業や、ねるとんで告白する男性のように「他のいい企業や、他のいい人」を探されるのは怖い!という状態では、自分にとって都合の良いところで終わらせてしまうのも一つの方法なのだ。

もちろん、合コンの例のように移動中に誰と一緒に話すか程度であれば、即決に効果はない。しかし、就職や結婚のように一度決めてしまうとなかなか解消しにくいものでは、非常に有効的な手段になる。迫られた相手としても、次があるかどうか分からない就職や結婚という状況では守りに入ってしまいやすい。

「今日までの限定割引セール」「50個限定」「最後の一品」という期間や数量を限定したチラシを見て、いらないものでも心が動いたりしないだろうか。あの効果と同じで、いかに「後がないかもしれない」ということを思い込ませるか、また、そういう状況を作り出すかがポイントになる。訪問販売員やセールスマンなどはこういったことがうまいというが、有利に進める要素は知っておいて損はないだろう。

ただし、忘れてはいけないことがひとつある。それは、即決などで無理に作り出した状況はコアではない可能性があるという点だ。つまり、コアと違い「あの人のことが忘れられない、向こうも私の方が良いと言っている」「あの企業の方が良かった、向こうもいい条件を出してくれる」という駆け落ちが起こる可能性があるのだ。

そういった駆け落ちを防ぐには、結局は、相手を自分に向けさせるべく頑張るしかない。即決を迫る場合は、一緒になった後に駆け落ちが起こらないような努力も重要なわけだ。