合理的に判断したのに新規参入でやられた理由
サントリーは、合理的に判断したにもかかわらず、しばらくしてサッポロに抜き去られてしまった。その原因は何だったのだろうかを考えてみよう。
ひとつの原因は予想が間違っていたことだ。「不況で給料が少ない」という中では、「価格が安い」という強みは想像以上に大きかった。味がビールとどのくらい違うかよりも、どれだけ安いかの方が、想像以上に反響が大きかったというわけだ。
消費者の好みを読み違えてしまい、「たとえ味がビールから離れても、安ければ利益が出るほど大きなシェアをサッポロに取られてしまう。」という予想が正しかったのだ。
つまり、先ほどのゲームの木では「サントリーが価格維持、サッポロが継続」の際の利得の予想が間違っていたわけだ。
実際は、次のような利得が正しかったとしよう。
この状況をバックワードインダクションで解いてみよう。
まず、次の赤い点線で囲った部分に注目してみよう。サントリーが価格を維持した場合だ。
すると、サッポロは継続した方が500>-100で利得が大きいため、、サッポロは撤退せず、市場で戦いを継続する。
次に、次の赤い点線で囲った部分に注目してみよう。サントリーが価格を下げた場合だ。
すると、サッポロは撤退した方が-100>-500で利得がまだましなので、撤退する。
最後に、次の赤線で囲った部分に注目してみよう。
サッポロの行動は赤矢印となるため、サントリーは価格維持をすれば300の利得、低価格では1,000の利得となることがわかる。つまり、価格を維持するのではなく、低価格で競争した方が良かったというわけだ。
これは、麦芽比率が高く味がビールに近いものを安い値段で売り、サッポロを追い出してシェアをキープした方が良かったという結論だ。