コラム1 バックワードインダクション~5人の海賊

バックワードインダクションの考え方を用いて、ちょっとしたクイズをやってみよう。

100枚の金貨を5人の海賊が獲得した。5人は偉い順にA,B,C,D,Eである。この金貨を5人で分けることになった。分け方は次の通りだ。

まず、Aが5人の配分を提案する。そして、半数以上の人の賛成が得られれば提案通りに配分して終了。賛成が得られない場合には、Aは、以後、受け取ることができず、賛成・反対もいうことができない。

次に、Bが残った4人の配分を提案する。半分以上(4人になったので2人以上)の賛成を得られれば提案どおりに配分する。賛成が得られない場合には、Bは、以後、受け取ることができず、賛成・反対もいうことができない。同じように、提案をCからEまで繰り返す。

30

A,B,C,D,Eは全員が合理的な場合には、Aはどのように提案すればもっとも多くの金貨を獲得できるだろうか?

では、バックワードインダクションで合理的に考えてみよう。まずはDが提案するところを考えよう。下の青い点線で囲った部分だ。

31

ここまでくるとDとEの2人だけだが、半数以上の賛成で決定するので、Dはどんな提案だろうが自分が賛成すれば採用されることになる。

そのため、D:100枚、E:0枚という提案をし、Dが自分で賛成することで決定される。

次はCが提案する時を考えよう。下の青い点線で囲った部分だ。

32

提案がダメな場合、次の結果はD:100枚、E:0枚ということがわかっているので、Dはどんな提案が来ても反対するはずだ。

では、Cはどのように提案すれば良いだろう?ここでは、C:99枚、D:0枚、E:1枚という提案をするのが最も効率的だ。

どんな提案をしてもDは断るのだから、Dには0枚。Eはこの提案がダメな場合、0枚になるのがわかっているので、それより多い枚数をあげれば必ず賛成を得ることができる。あとは自分が賛成すれば、Cの提案で決定される。

次はBが提案する時を考えよう。下の青い点線で囲った部分だ。

33

提案がダメな場合、次の結果はC:99枚、D:0枚、E:1枚という結果になることがわかっている。Bは提案する時、自分の賛成に加え、あと1票の賛成が必要だ。

C,D,Eのうち、最も安く済むDに1枚上げればよい。そのため、Bは、B:99枚、C:0枚、D,1枚、E:0枚、と提案すれば、自分と、次の結果よりこの提案の方が望ましいDの賛成によってその配分が決定する。

最後に、Aが提案する時を考えよう。下の青い点線で囲った部分だ。

34

提案がダメな場合、次の結果はB:99枚、C:0枚、D,1枚、E:0枚という結果になることが見えている。Aの提案が採用されるには、A以外に2人の賛成が必要だ。

Bの提案の結果より多い金貨をもらえる人はAの提案に賛成するし、少ない人はAの提案に反対する。

ここでは、Bの提案では0枚になってしまうCとEに1枚ずつ金貨をあげるのがもっとも安く2票を集めることができる提案だ。

つまり、A:98枚、B:0枚、C:1枚、D:0枚、E:1枚と提案すれば、最も自分が多く金貨を得る配分が採用されることになる。