裏切りという支配された戦略
刑期が決まったルパンと次元に、何故自白をしたのか理由を聞いてみた。
そこには「なるほどな」と思える理由があり、好き嫌いなどの感情ではなく、合理的に動いた結果こうなってしまったことが分かった。
まずはルパンの言い分を聞いてみよう。
ゲーム理論の基本だが、当然相手の行動を考えなければならない。今回は別々に捕まってしまったので、次元の出方は分からないし、連絡を取って打ち合わせもできない。
だから次元が自白した場合、黙秘した場合それぞれについて考えたんだ。相手が黙秘した場合、自白した場合で自分がどうすればいいのかを考えるのが合理的だろう?
ルパンの考えは次のようであった。
・次元が黙秘すると…
次元が黙秘している場合、ルパンが自白するか、黙秘するかで起きる結果は、上の赤丸の部分となる。ルパンはこの2つの結果から自分にとって良い結果を選ぶわけで、懲役2年よりも0年の方がいいに決まっているので、自白を選ぶ方が合理的だ。
・次元が自白すると…
次元が自白している場合、ルパンが自白するか、黙秘するかで起きる結果は、上の赤丸の部分となる。ルパンはこの2つの結果から自分にとって良い結果を選ぶわけで、懲役12年よりも10年の方がいいに決まっているので、自白を選ぶ方が合理的だ。
つまり、次元が黙秘しようが自白しようが、どちらの場合にしろ、ルパンは自白した方が良い結果を得られるのだ。だから自白した。ということであった。
一方、次元はこう説明してくれた。
・ルパンが黙秘するなら…
オレが黙秘すると、オレは懲役2年、オレが自白すると0年だ。当然、自白した方がいいだろう?
・ルパンが自白するなら…
オレが黙秘すると、オレは懲役12年、オレが自白すると10年だ。こっちも、オレは自白した方が得なのはわかるよな?
つまり、ルパンが黙秘しようが自白しようが、どちらの場合にしろ、次元は自白した方が良い結果を得られるわけだ。だから自白した。ということであった。
つまり、2人とも「相手がどんな行動をしてこようが、自分は自白する方が、黙秘するより絶対に良い結果になる」という状態だったわけだ。このように、相手のどんな戦略に対しても、必ず有利になるような戦略のことを支配戦略という。相手がどうしようが、自白する場合は黙秘する場合より必ず良い結果をもたらすので、「自白」は支配戦略だったというわけだ。そして、支配戦略を取ることはとても合理的だ。
ルパンと次元が直面していたこの囚人のジレンマでは、自白することは支配戦略であり、2人とも支配戦略という合理的な行動をとった結果、お互いが自白したのであった。