バブル崩壊後に優良企業が潰れた理由
・バブル崩壊後に債権放棄が進まず多くの優良企業が潰れた理由
今となっては懐かしいが、バブル崩壊後、過剰債務問題が取りざたされた。
急激なデフレの影響で企業の過去の借金が非常に大きなものになってしまったのだ。次のような例を考えてみよう。
ある企業にA銀行とB銀行が半分ずつお金を貸していた。この企業はバブル崩壊後も、なんとか売上や利益は出ているものの、借金の負担が厳しい状況だ。この企業がやっていくには、銀行に借金の一部を放棄して(諦めて)もらうしかない。
A、Bはそれぞれ、一部を債権放棄して(借金を諦めて)企業を続けさせ、将来的に残った部分を返済させるのか、債権放棄しないでこのまま会社を清算(倒産)させ、残った少ない資金や建物などの資産を借金の返済に当てるかを選ぶことができる。
A、Bともに協力し、お互いがある程度の借金を諦めれば、企業は事業を継続でき将来的に残った借金を返してもらえる。
A、Bどちらかだけで、かなりの借金を諦めれば、企業は事業を継続でき、借金は返してもらえる。借金を諦めなかった側は全額回収できるが、諦める側はかなりの額を諦めないといけないので、それなら倒産させて回収した方がまだましだ。
A、Bともに借金を諦めなければ、企業は倒産し、残った少ないものをお互いで分けあう。
これでは、債権放棄をしないで倒産させてしまうのが支配戦略になってしまう。お互いが協力して、借金を諦めれば企業も倒産しないで済むし、銀行も将来的に残った借金を回収できる。しかし、囚人のジレンマの状況のせいでそれができずに、不況下でも利益を出している優良な企業ですら、資金繰りのせいで倒産してしまっていた。
なお、当時は、債権放棄は囚人のジレンマ以外にも、モラルハザード(借金がある他の企業が、自分のとこの借金も諦めてくれるだろうと思ってしまい頑張らなくなってしまう状況)を生み出し、良くないと見られることも多かった。しかし、最近では、銀行団が協力して債権放棄し、将来的にある程度の借金を返してもらうという望ましい選択も増えてきている。