デフレを生み出す囚人のジレンマ2
池袋駅西口を出ると、北口側に大衆向けの牛丼店が2店ある。「吉野家」と「松屋」だ。徒歩1分、お互い目に見える非常に近い場所に立地している。
バブル崩壊直後で、不況になる前はどちらの店も牛丼(並)を一杯400円で販売していた。日本経済が思うように回復せず、デフレスパイラルに陥り始める直前の話で豚丼が出る大分前の話だ。
その後、不況が訪れた。外食産業もあおりを受け、客足が途絶え始めていた。このままでは売上が減っていくのを眺めているだけになってしまう、どうにかせねば!そういって最初に動いたのは「マクドナルド」だった。なんと、ハンバーガーの値段を半額にしてしまったのだ。その煽りも受け、吉野家、松屋からはさらに客足が遠のいていった。
ここで、吉野家の社長はこう考えたとしよう。
「このままでは、さらに客足が遠のいてしまう。売上を保つためにも、ブランドを保つためにも、どうしてもお客は獲得しておきたい。相手の松屋が何もしてこないなら、このまま400円で売ればうちも相手も3,000の利得のままだ。しかし、うちだけ280円に値下げすれば、松屋のお客をほとんど獲得できるし、他のファーストフード店からもお客が流れてくる。値下げした分以上に儲かるので、うちの利得4,000になるな…。」
一方で、松屋の社長もこう考えたとしよう。
「うーむ、このまま価格を400円に保ったままでもジリ貧だ。どうにかしないと。吉野家だけに値下げされたら、お客をほとんど持っていかれてしまい、うちの利得は500だ。相手が何もしてこないとは思えない。しかしお互いが値下げしてしまった場合は、お互い利得は1,500か、うーむ…。」
ここで状況を整理すると、次のような状態だ。
両社ともに価格を据え置いたら、どちらも利得は3,000
一社が値下げし、一社が価格を据え置いた場合、値下げした方の利得は4,000、据え置いた方の利得は500
両社が値下げしたらどちらも利得1,500
この状況を表すとこのようになる。
これは、先ほど見たとおり囚人のジレンマの構造をしている。