正義がいつも正しいとは限らない

A、B、Cの3社は協議が長引いているようだが、これがもし2社だったら話は簡単にまとまったかもしれない。相手が1社なので、相手の立場で考えやすいからだ。

しかし、3社になると途端に交渉は難しくなる。関係が複雑になるからだ。三国史でも2国の対戦でどちらが勝つかではなく、3国が複雑に絡み合っているからこそ色々な戦略が生まれていた。特に、3国のうち2国だけが組むことができるのが最も複雑になっている要因だ。

もう一度、3社の例を見てみよう。

先ほどは、一見すると公平と思える一般的な2つの配分方法を見てもらった。それは、「均等配分」と、「比例配分」だ。この均等配分のことを「平均的正義」、比例配分のことを「配分的正義」ということもあり、「正義」という表現が使われるほど、広く人々に浸透している配分方法なのだ。

先ほどの例でこれら正義の配分方法にもとづいてシナジー効果の利益を分けた結果は下の通りになる。

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今回は3社で合併した場合にシナジー効果が一番大きいのはわかっていたが、2社だけで合併することも可能だった。そのときの利益は次の通りだ。

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先程は、C社が均等配分では自分の取り分が少なすぎるとして、比例配分を提案した。しかし、それは拒否されてしまった。何故ならば、AとBだけで抜け駆けして合併すると、55億円となり、比例配分した場合の利益A:6億円、B:48億円(合計54億円)よりも、抜け駆けした方が利益の合計が大きかったからだ。

これは、大きな企業が小さな企業の立場をしっかり考えずに、独りよがりをしてしまったと言えるだろう。

このように、シナジー効果が期待できる既存の大きい企業と新興の小さな企業が合併や提携しようとするときに、このような失敗をすることは現実でも起こりやすい。