コアを探って抜け駆けを防ぐ
比例配分の案では、最もシナジーが大きく望ましい「3社による合併」は達成できなかった。
これは「そんな配分だったら2社だけでやった方がいい。」という配分案だったからだ。逆に言えば、「そんな配分だったら、他の方法(2社だけや1社だけなど)でやった方がいい。」と誰からも言われない案であれば、誰も「3社による合併」を拒否することはないだろう。
つまり、3社が合併して、それをA、B、Cに配分したときに、
Aの取り分+Bの取り分 ≧ AとBが合併した時の利益(55億円)
Bの取り分+Cの取り分 ≧ BとCが合併した時の利益(100億円)
Cの取り分+Aの取り分 ≧ CとAが合併した時の利益(65億円)
という3つの条件を満たせば、誰が抜け駆けしても利益が増えないので、抜け駆けしようと思わない。
もちろん、
Aの取り分≧Aの単独状態での利益(5億円)
Bの取り分≧Bの単独状態での利益(40億円)
Cの取り分≧Cの単独状態での利益(55億円)
という3つの条件も当然必要だが、これがわからない提案する人はさすがにいないだろう。
このように「他の方法(2社だけや1社だけなど)でやった方がいい。」と誰からも言われないような配分案のことをコアという。協力ゲームの解(結果)の一つがコアである。
ちなみに、上の例でコアとなる条件を求めるのは簡単な計算でできる。3社が合併した時の利益を配分した際の、Aの取り分をa、Bの取り分をb、Cの取り分をcとすると、次の①~⑦を満たす組み合わせとなる。
a+b+c=120…①
a+b≧55…② b+c≧100…③ c+a≧65…④
a≧5…⑤ b≧40…⑥ c≧45…⑦ (単位:億円)
頭の体操のために計算してみてもいいが、単なる計算なので、飛ばしても構わない。
①を変形してa+b=120-c これを②式に代入して 120-c≧55 ∴65≧c
①を変形してb+c=120-a これを③式に代入して 120-a≧100 ∴20≧a
①を変形してc+a=120-b これを④式に代入して 120-b≧100 ∴55≧b
これらを⑤~⑦と合わせて、コアは20≧a≧5、55≧b≧40、65≧c≧45の3つを満たすような配分案となる。
これに照らし合わせると、比例配分ではa=6、b=48、c=66であり、C社の利益が多すぎることがわかる。そのため、C社の利益が多すぎるなら、A社とB社で抜け駆けした方がよい、という結果になっていたのだ。
このように、一般的な配分案にとらわれず、まずは「他の方法(2社だけや1社だけなど)でやった方がいい。」と誰からも言われない「コアな提案」の条件をおさえておくと、話は早く進んで行く。