問題は数ではなく影響力

K党は議席数が減ったにもかかわらず、選挙前より良い状態になっているのは先ほど見た通りだ。

多数決では数が多いほど有利なのは当然だが、K党の議席数は22議席から7議席と減っている。どう見ても状態は悪くなっているように見えるが、それにもかかわらず、実際は、影響力は増していたという不思議な結果であった。

このような例は、国連を想像するとわかりやすい。

国連の安全保障理事会(安保理)は、拒否権を持つ5カ国の常任理事国と、10カ国の非常任理事国で構成される。そして、基本的には9カ国の賛成があれば決定されるのだが、拒否権を持つ常任理事国が1国でも拒否をするとその案は採用されない。他の14カ国が全て賛成でも、たった1票の反対で拒否できるということだ。つまり、拒否権を持つ常任理事国の影響力は、数字の上ではたった1国かもしれないが、影響力は段違いなのは理解しやすいだろう。

政党の例では、選挙前にK党の議席数が22人でも、J党が過半数を握っていた。これは、J党が国連でいう拒否権を持っているのと同じ状況だ。K党が反対しようが賛成しようが、J党の意向次第、つまり全く影響力がなかったのだ。しかし、選挙後は議席数が7になったにもかかわらず、J党が過半数を割ったため、意見や希望は聞き入れられる状態になっていたわけだ。

このように、影響力は、相手の数字にも影響を受けるため、単純に自分だけの数字だけでは測ることができないのだ。では、どのように影響力は測るのだろう?

実は、影響力はシャプレー値で求めることができる。影響は、貢献と同じく影響も「自分が加わることでどれだけ結果が良くなるのか」つまり「自分がいなくなるとどれだけ困るのか」ということで測れるものだからだ。

勢力関係においては、重要なのは影響力にもかかわらず、多くの人は単純に自分の数字ばかりを気にする傾向は強い。小数派がうまくそこを付くためにも、影響力の測り方を知り、相手の影響力の下げ方、自分の影響力の上げ方のヒントを知っておこう。